第20回高校生小論文コンクール審査結果発表
受賞者及び受賞学校 これまでの優秀作品 戻 る
グループ 優秀賞 グループ部門
優秀賞
福岡県立久留米高等学校3年
山内茉梨香さん 森田晴香さん
池田若葉さん 石橋美寿輝さん
牟田 暉さん 後藤美菜さん
「あなたは何しに福岡へ!?」
~本物志向で地域活性化を目指す~


一.研究の目的・動機

 福岡を訪れる外国人観光客に日本のよさを伝えるとしたら、初めに県内のどこを思い浮かべるだろうか。地元だけではなく、他県からも幅広い世代の方が訪れ、多くの外国人に出会う場所といえば、太宰府天満宮を思い浮かべるだろう。太宰府には、豊かな自然と歴史ある天満宮など魅力が盛りだくさんだ。そこで、太宰府に焦点を当てて、どのようにして外国人観光客を増加させ、地域活性化につなげられるかを考えた。さらに、高校生の目線で考えたアイデアをいかして、さらなる福岡の発展に貢献したいと思った。

二.仮説の設定

 太宰府天満宮周辺には、梅ヶ枝餅や土産ものを売る店ばかりが多く軒を連ねている。そのため、太宰府にある店舗は外国人受けのする表面的な観光客狙いのおもてなししか提供できていないのではないかと考えた。

三.調査方法

 筑紫女学園大学で開催された2日間のサマーキャンプに参加し「観光客の目線で太宰府観光の今を考える」「まち歩きをして身近に埋もれた観光資源を探す」という内容で太宰府の魅力について調査した。

四.調査内容

(1)福岡の国際化の現状

 福岡は国際都市として世界で注目されている。Asia Week誌にて「アジアで最も生活しやすい都市」第1位として1997年から2000年の間に3回選出された。

 旅の楽しみの一つとして買い物がある。データによれば中国の旅行消費額が年々増加していることがわかる。「爆買い」という言葉が2015年に流行語年間大賞に選出されたが、ある団体バスツアーの一日の旅程表を見てみると、福岡タワーから始まり太宰府観光、最後は天神でショッピングという流れになっている。私たちが実際にインタビューした外国人も、ツアーの中心はショッピングで、太宰府が主な目的地ではなかった。しかし、近年では買い物などの「モノ」消費から、日本の文化や習慣を体験・交流する「コト」消費に移行している。

(2)筑紫女学園大学でのフィールドワークを通して

 実際に太宰府の参道を歩いてみると、スターバックスコーヒーや他のお店でも言語表記の多様化が見られ、外国人観光客のニーズに合わせたサービスが増えていた。また、ごみ箱を減らしたり、電柱が地下に埋め込まれていたり、街全体の景観に配慮した工夫もなされていた。一方、賑わいは参道が中心で、古くからある店舗は閑散としていた。

 私たちは、天満宮の参道から少し離れた場所にある呉服屋の「利久」で太宰府観光の実態について話を伺った。その中で「外国人に太宰府の本当の魅力が伝わっていない。本当に心から日本文化を学びたいと思っている人に来てほしい。グローバル化に影響されすぎず、地元住民がこだわりを持った地域づくりをしたい」とおっしゃった。

 また「有岡畳店」にも話を伺った。昭和中期までは参道、天満宮を含め、地元の人たちの生活の場だったが、現在では参道が観光スポット化した影響によりお店が廃業してしまったそうだ。この二人の店主のお話から「今まで培われていた美しい日本文化を後世に引き継ぐ」という思いと、外国人に合わせて日本文化を安売りする現状とがかけ離れていることに違和感を持たれていることや、受け継いできた日本の伝統文化の地である太宰府への熱い思いを感じた。

五、仮説の検証

 仮説で立てた通り、参道のほとんどの店舗は、言語表示の多様化や和風の土産を提供するなど、表面的な太宰府観光に力を入れているように感じた。一方、参道から離れた昔からある店舗は、周りのお店がグローバル化していく中なかで、疎外感を感じておられた。

六、結論・まとめ

 調査の結果、昔からの地元に根差した店舗は、グローバル化に合わせて変わっていく参道の店舗とは観光客に対する姿勢が大きく異なり、本物志向を保とうとしていた。賑わいの少ない通りにも観光資源はまだある。しかし、それは視点を変えないと見えないのだ。そこで私たちが考えるこれからの地域活性化を目指すキーワードは「グローカル」だ。「グローカル」とは「グローバル」と「ローカル」の造語で、地球規模の視野で考えながら、地域視点で行動することである。

 私たちの考える本物志向とは、地元住民がこだわりを持った地域の伝統や特色を観光の中にいかすことだ。太宰府はグローバル化の影響により、住民の地域への愛着が観光に反映されにくくなっている。グローバル化の推進と伝統文化を守り伝えることとをうまく融合させることができれば、魅力的な観光地となり、地域全体の活性化をさせていくことができる。

七、提案

 日本の歴史や文化を存分に感じることのできる、地元での体験を重視した本物志向の観光プランを提案する。

「時間旅行 in 太宰府~太宰府に眠る歴史に触れる~」

体験プランの概要

〇テーマ
 昭和20~30年代にタイムスリップ

〇ターゲット層
 外国人観光客

〇時間
 1泊2日の民泊

〇ねらい
 ①太宰府の歴史、日本の礼儀作法、文化を知る。
 ②未発見の魅力に気づく。

〇具体的な方法
 1日目は、九州国立博物館で太宰府の歴史を学んだ後、天満宮を参拝。呉服屋「利久」で着付け体験を通して着物の着方や振る舞い、化粧のしかたを学ぶ。その後、茶道の基本作法を学び、自分でたてたお茶を飲む。
 2日目は、有岡畳店の協力を得て、畳を使ったコースターやランチョンマットなどの小物を作る。その後、参道の梅ヶ枝餅のお店の方々に協力してもらい、自分の好きな具材をおもちの中に入れて、オリジナルのものを作る。

 提案したこのプランにより、参拝し、参道で買い物をして帰るだけになっていた太宰府観光が、地域や人とのふれあいを通じて「モノ」消費では得られない体験となり「また訪れたい」というリピーターの獲得にもつながるはずだ。

 今後、2020年の東京オリンピックや福岡で開催される世界水泳、ラグビーワールドカップで観光客の増加が見込まれる。福岡の魅力をより多くの人に伝えるための絶好のチャンスだ。太宰府だけでなく、世界遺産に認定された三池炭鉱や沖ノ島など、外国人に馴染みのない観光名所も、体験や交流を通して新たな福岡の魅力が発信できるはずだ。私たちが推奨する観光のグローカル化を太宰府から福岡へ広げていくとよいと考える。



参考文献
・「太宰府自慢」太宰府天満宮文化研究所
・筑紫女学園大学ホームページ https://www.chikushi-u.ac.jp/
・福岡県庁観光課ホームページ http://www.pref.fukuoka.lg.jp/soshiki/9101222/