第20回高校生小論文コンクール審査結果発表
受賞者及び受賞学校 これまでの優秀作品 戻 る
グループ 読売新聞西部本社賞 グループ部門
読売新聞西部本社賞
学校法人安田学園
安田女子中学高等学校2年
大久保陽菜さん 庄野 真白さん
村井萌萌子さん 西村 もえさん
相原 陽菜さん
「介護ロボットは普及できるのか」

 昨年、学校で介護ロボットに関するディベートがあり、私たちのグループは介護ロボットについて興味を持ったので調べることにした。調べていくと介護ロボットは開発されているが、一般家庭において使えるような普及はほとんど進んでいないということがわかった。そこで私たちは、なぜ介護ロボットの普及が進んでいないのか理由を調べ「普及を妨げている事情を解消することで、介護ロボットを普及させることはできるのか」というテーマを掲げ研究することにした。

 まず、日本の介護の現状を調べた。すると高齢化が進み、高齢者が増えているにもかかわらず、介護者の人数が足りていない。介護のために離職する人が増えているなど、介護に関して困難な社会現象が起きていることがわかった。私たちは、便利であろうはずの介護ロボットの普及がなぜ進んでいないのだろうかと疑問を持った。

 まず、インターネットを利用して介護ロボットが普及していない理由を調べてみたところ、三つの理由がわかった。一つ目は市販されている介護ロボットの多くは高額で、なかなか購入することができないという「コストがかかる」という面。二つ目は、「万が一ロボットが暴走したら?」「突然故障してしまったら?」というロボットならではの不安が引き起こす「安全性が保証されていない」という面。三つ目は、介護ロボットの供給側である開発メーカーと使う側である介護福祉施設のミスマッチが原因で起きる「実用的でない」という面。この三つが主になって普及が進んでいないことがわかった。

 次に私たちは、介護ロボットを実際に使う側、使われる側になった時の意見を知りたいと思い、10代、20~50代、60代以上と三つに分けた世代からそれぞれ100人ずつ、合計300人に「介護する側になった際とされる側になった際に介護ロボットを利用したいか」というアンケートを実施し、介護ロボットが普及していない理由を探った。

 アンケートの結果は200名からの回答を得ることができ、全体の約60パーセントの人が介護ロボットを使うことに否定的であった。その理由として、10代はコミュニケーションが大切。20代・30代は人間の方がよい。40代は人間の方がよい。50代は人のぬくもりが大切。60代以上は人間の方がよい。が主な意見だった。この結果からどの年代にも共通していえることは、ロボットを使用したくない。ロボットに介護されたくないと思っていることで、その理由の大半は人のぬくもりの方が大切ということだった。

 そこで、今回の調査で明らかになった介護ロボットが普及しない原因は「コストがかかる」「安全性が保証されていない」「実用的でない」の三点に加え、アンケート調査でわかった「人のぬくもりが大切」ということに対して解決策はないか考えてみることにした。

 一つ目の「コストがかかる」ことを解消するためには現行のロボットの材料と変わらぬ性能で安価な材料を利用するなどいろいろ考えた。しかし、介護ロボットに関して深い知識を持たない私たちは、なかなかいい案を出すことができなかったため、インターネットで調べてたところ、年々介護ロボットの値段が下がっていたり、自治体によっては補助金が出ていたりしているので、介護ロボットが世間に普及して価格が手頃になったり、全国の自治体が補助金を出してくれるようになるまで待つしかないのかもしれないと思った。

 次に「安全性が保証されていない」ことを解消するためには、先が鋭利でないものや表面がざらついていない材質を使って、ロボットの角を丸くしたり、スポンジなどの柔らかいもので角を覆ったりするなどの工夫を凝らすことで、介護をする側もされる側もけがをすることなく介護ロボットを使うことができるのではないかと考えた。

 三つ目の「実用的でない」は、供給側である開発メーカーと利用する側である介護福祉施設とのミスマッチが原因で起こっているので、これを解決するためには、介護ロボットを製作している会社が社内に介護施設を作ってそこで介護ロボットを実際に利用することで、現場の声を聴くことができ、改善点なども明らかになる。改善を繰り返していくことにより介護現場のニーズに合った介護ロボットを作ることができるのではないかと考える。

 近年さまざまな場でロボットの活躍が進んでいる。例を挙げれば、スマートフォンのAIアシスタントやペッパーくんなどである。導入当初はそれほど普及していなかったこれらが、今や私たちの生活に定着し、なくてはならないものになっているように、介護ロボットも生活になじんでいけば、日常的に使われるようになるはずであると私たちは考えた。

 最後に「人のぬくもりが大切」という点の解消法は、アンケートの結果から、ロボットに無機質なものというイメージがついていることがわかったので、それを払拭するために、例えば、電気で人の体温と同じに保つことで人の温かさを再現し、人の皮膚のような柔らかい材質でロボットを覆うことで人の肌を再現するなど、形からでも人間味を出すことで、ロボットが持つ無機質というイメージを少しでも払拭できるのではないかと考えた。そして、ロボットが怖いという意見もあったので、もっと介護ロボットのことを知ってもらい、触れ合えるような機会が増えれば改善できるのではないかと思う。

 周りの人の影響を受けることも多い国民性の私たち。誰かが介護ロボットを使い始めれば、多くの人が介護ロボットを使うきっかけになるのではないかと考える。そこで、介護ロボットを製作する会社側が地域ごとに試しに使ってくれる人を選び、期間を決めて無料で介護ロボットを貸し出して利用してもらうことで、介護ロボットがどのようなものかを理解してもらい、その利便性を印象づけることができれば、その普及にはずみをつけられるのではないだろうか。

 そのような機会があれば、積極的に参加して、周りの人々にいい影響を与えることで、介護ロボットの普及に貢献したいと私たちは考えている。