第20回高校生小論文コンクール審査結果発表
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グループ 最優秀賞 グループ部門
最優秀賞
学校法人永島学園 出雲西高等学校2年
岩浅智大さん 山根加蓮さん
橋本 開さん 嘉藤秀美さん
尾添龍太さん
「出雲発!漂着ゴミ問題」
~海岸清掃及びマイクロプラスチック問題についての考察~


Ⅰ.インターアクトクラブの環境保全活動について

年5回海岸清掃するインターアクトクラブ、日韓の海洋ゴミ問題について討論会を実施  創部52年の出雲西高校インターアクトクラブは環境保全活動を中心に、部員数36名で活動しているクラブである。今回は、海岸清掃とマイクロプラスチックの問題について考察したことを述べたいと思う。

1)インターアクトクラブは年間5回海岸清掃を行っている。清掃を行ってみると日本のゴミだけではなく韓国、北朝鮮、中国、ロシアのゴミが60%もあることがわかった。私たちは海外からのゴミを減らすために、島根県庁の文化国際課に相談し、日韓の高校生の交流会を企画、一緒に出雲市の海岸を清掃して、ゴミを減らすための討論会を行っている。この国際交流は今年で7年目である。

2)このような活動と交流を続けていくうちに、韓国の高校生たちは、韓国のゴミが一番多いことを反省し、韓国に帰ってゴミを捨てない運動をしてくれるようになった。海岸清掃をすると、韓国のゴミが少しずつ減ってきている。また、討論会の時に問題となったのは、最近その悪影響が懸念されているマイクロプラスチックについてであった。私なりに調べてみると全世界で1年間に3億㌧のプラスチックが生産されている。プラスチックは海に捨てられると5㎜以下に小さくなる。これがマイクロプラスチックである。世界中の海には、約5兆個のマイクロプラスチックが漂っていると推測されている。これを魚介類が食べ、私たちもそのマイクロプラスチックを食べた魚介類を食べている可能性は十分にあると思われる。

 そこで私たちは、島根県庁の廃棄物対策課の方々に相談し、マイクロプラスチックの調査を行うことにした。


Ⅱ.2018年度NEAR(北東アジア地域自治体連合)プロジェクト海辺の漂着物調査~マイクロプラスチック試行調査要領~について島根県庁の方から教えていただいた。

ア.調査目的
 生態系への悪影響が懸念され、世界的に関心が高まっているマイクロプラスチックについて、身近な海岸における存在の実態を把握するため「NEARプロジェクト海辺の漂着物調査」において試行的に調査を行う。

イ.調査時期・回数
 1回/年、秋季(原則として9月~11月)

ウ.調査場所
 原則として各自治体一海岸(※複数の海岸で実施することも可)

エ.調査方法
 原則として、次の方法により、概ね1㎜以上、5㎜以下のマイクロプラスチックを採取する。

マイクロプラスチック調査方法は(NEAR方式:20cm角、深さ2.5cm)砂を採取しふるいにかけて個数を数える

  • A 「海辺の漂着物調査」調査区画近辺の砂地を調査場所として選定する。
  • B 縦20㎝、横20㎝の正方形の区画を設定し、表面の大きなゴミ(5㎜超)をできるだけ除去する。
  • C 区画内の砂を約2.5㎝の深さまでバットに採取する。(砂採取量の約1,000㎤)
  • D 採取した砂から5㎜超のゴミを除去するため、バケツの上で5㎜目ふるいにかける。
    • ●1. 砂の粒径が1㎜超の場合(水による浮上分離)
      • ① Dのバケツに水約2㍑を入れ、よく攪拌(かくはん)する。
      • ② バケツ内の上澄み液を浮き上がった浮遊物ごと1㎜目ふるいに流しこむ。
      • ③ ①②の操作をもう1回くり返し、最後にふるい上に残った浮遊物を採取する。
      • ④ 採取した浮遊物をバットに移し、色や形状からプラスチックと判断されるゴミを集め、個数を数える。(風が強い場合はビニール袋に入れて、袋の外側から個数を数える)
      • ⑤ 調査票に記録する。
    • ●2. 砂の粒径が1㎜未満の場合(ふるいのみによる分離)
      • ① Dのバケツ内の砂を1㎜目ふるいにかけ、1㎜未満の砂、ゴミを除去する。
      • ② ふるい上の試料をバットに移し色や形状からプラスチックと判断されるゴミを集め、個数を数える。(風が強い場合はビニール袋に入れて、袋の外側から個数を数える)
      • ③ 調査票に記録する。

オ.調査結果に関する留意事項

  • 本調査結果は、あくまでも海岸の一地点における調査結果のため、海岸全体を代表するものではない。
  • 水による浮上分離を行う場合(●1の方法)は、水より比重が大きいプラスチックは沈降するため採取できない。

 この調査内容をよく読み、昨年の11月に島根県庁の廃棄物対策課の方と共に出雲市くにびき海岸で調査を行った。海岸は、それほどゴミの落ちていない箇所で、波打ち際より8m離れた所で行った。結果はプラスチックゴミが135個もあり、とても驚いた。プラスチックが分解されるのに450年もかかることや海洋ゴミの中でプラスチックゴミが74.2%も占めていることがわかり、プラスチックゴミの問題は深刻であることが明らかなので、島根県、鳥取県の海岸で調査をしようと部員同士で話し合った。

マイクロプラスチック調査を実施した場所  まず、平成30年9月~10月にかけて世界に先駆けて10箇所調査を行った。最初の調査は、比較的きれいな海岸である出雲市の①稲佐の浜②多伎海岸で行った。稲佐の浜は出雲大社のある大社町の海岸で観光客が数多く訪れる場所である。地域の人たちも毎週のように清掃を行っている。神無月には全国の神様が集って会議をされる浜辺といわれているだけに、この場所のマイクロプラスチックの数は8個。きれいな海岸であった。次は②出雲市の多伎海岸にて調査を行った。この多伎海岸は海水浴客も多く、キララ多伎という道の駅もあり、サーフィンをする人も多い。そのため地域の人たちもよく掃除をされており、マイクロプラスチックの数は11個であった。調査は1日2箇所が限界であるため、日を変えて大田市の③波根海岸と④五十猛(いそたけ)海岸で調査を実施した。③④ともに大田市の漁港であり、漁師町として有名な地である。全体的には清掃されていたが、部分的には汚れている場所もあった。結果は③波根海岸は32個④五十猛海岸は25個であった。また別の日に、⑤島根半島の東端の美保関海岸と⑥西端、日御碕海岸の調査を行った。この⑤⑥の海岸には、有名な美保神社と日御碕神社があり歴史的にも名高い所である。地形的には岩場が多くマイクロプラスチック調査は困難を極めた。また、この地は半島の東端と西端のためゴミが引っかかりやすい場所である。結果は⑤の美保関海岸は47個、⑥日御碕海岸は49個であった。

 また、部員から宍道湖はどうだろうか?とか県外にも調査に出てみてはどうか?という意見もあり、日を変えて、⑦宍道湖なぎさ公園と⑧鳥取県境港海岸の調査を行った。⑦宍道湖なぎさ公園は、湖なのでプラスチックゴミは少なく7個であった。⑧の境港海岸は、ウィンドサーフィンの有名なスポットであり、掃除はきちんとなされていた。ただ、清掃会社が集めたプラスチックゴミは数多くあり驚いた。このように島根県、鳥取県には海外から流れ着いた廃タンクや、発泡スチロールのゴミが山のようにある。これは本当に深刻な問題である。⑧の境港海岸のマイクロプラスチック数は12個であった。

 最後に、出雲市で汚い海岸といわれている⑨湊原(みなとばら)海岸と、⑩くにびき海岸の調査を行った。⑨湊原海岸⑩くにびき海岸も、島根半島の西側に位置し、湾になっており、ゴミのたまりやすい海岸である。私たちインターアクトクラブも毎年2回は海岸清掃を行う場所である。この湾は、海外のゴミやポリタンク、大きな漁具などが数多く流れ着く。しかし、地域の人たちが清掃をする様子はほとんどない。そのため、汚れ放題の海岸である。

漂着する発泡スチロールも大きな問題  この⑨湊原海岸のマイクロプラスチックの数は59個、⑩くにびき海岸のマイクロプラスチックの数は62個であった。

 また、⑩くにびき海岸で発泡スチロールが粉々になった状態を目の当たりにすると、そのゴミが飛散して川や海に流れ、それを魚が食べ、さらにその魚を人が食べる姿が具体的に想像されて、とても恐ろしい気持ちになった。


Ⅲ.プラスチックの削減を!

 海へのマイクロプラスチックの流出を減らすためには、海岸のプラスチックゴミの清掃回収活動は重要であると思う。島根県、鳥取県の一部の海岸を見ると、①稲佐の浜8個、②多伎海岸11個、⑧境港海岸12個と清掃回収活動が盛んな海岸はマイクロプラスチックの数は少なく、優良な海岸であった。しかし、清掃回収活動の少ない出雲市の⑨湊原海岸は59個、⑩くにびき海岸は62個という多さであった。

 この結果から地域の人たちが自分の住む海岸をきれいにしようと清掃回収活動を進んで行うことが重要であるとわかった。また、海に流入するプラスチックは陸上に住む私たちの暮らしの中から出てくるものだということである。そのため私たちが日常生活の中で使うゴミになるプラスチックを減らしていく必要があるのである。最近、アメリカの一部の州やEU諸国では、レジ袋の禁止や削減が法制化された。また「スターバックス」はプラ製のストローを廃止した。また「ガスト」全店でも廃止されるようである。これらの事例は、環境保護の観点から見て、たいへんプラスになると考える。

出雲市大社町の稲佐の浜のような美しい海岸を取り戻そう  現代の科学技術を駆使し、木や紙をうまく使い、代替技術の開発をすることも重要である。アメリカの先住民の言葉に「我々は子孫から大地を借りて生きているのだ」というものがある。私たち人類は、未来の世代から借りているこの地球を汚さずに返す責任があるのだ。450年も分解されないプラスチックを地球上に残さないように意識の転換が必要である。コンビニやスーパーで弁当や飲み物を買う時、本当にレジ袋が必要なのか。マイバッグを使うべきではないかと考えることが重要なのである。そして、環境汚染、環境負荷の少ないプラスチックに変わる代替物を真剣に開発する努力を早急にするべきではないかと私たちは考える。



参考資料
日経ナショナルジオグラフィック社のホームページ
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/18/053000010/053000001/